一
恵を与える輝きに右手を挙げて 掌を自らに向ける 指先から漏れ降り注ぐ光を 心に浴びせる 『喜』
全てを見下ろす裁きの輝きに左手を翳し 手の甲を自らに向ける 軽く握り 心に光りが届かぬようにする 『哀』
満月と太陽の義
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「たいちょー、たいちょーも飲みましょうよ!」 段々呂律の回らなくなったようで、見上げた先にある顔は既に赤く染まっていた。 「ハハハ…カイト、あんまり飲み過ぎるなよ、明日もあるんだから」 「いいんじゃないッスか、明日のために飲むんですから!」 屁理屈だなと思いつつも、やはり一仕事終えた後の酒の味は格別で、飲まずにはいられないのは確かだ。 「私は遠慮しておくよ・・・・今は飲みたい気分じゃない」 そう言って、また上を見上げる。
「今宵の月は、満月ですか」
ふと、すぐ傍で聞こえた声に目を向ける。 「隊長は月見酒、なさらないんですか?」 「レイズか…お前こそ、酒に手をつけていないようだが?」 ふふ、と笑みを私の方に向けながら、副長のレイズが湯気の立つカップを差し出してきた。 「おそらく、貴方と同じ理由の筈ですよ?」 人を食ったような笑みに、つい笑みを返す。 「良い月だな」 「そうですね」 カップに注がれたコーヒーにすらその姿を映し出す美しき月。今、この月は完全に夜を支配しているように思えた。 「…今日は本当に、血の流れることがなくて良かった」 ふと、《今日》を思い返した。いや、月が何かを連想させたのかもしれない。 「彼等には解っていたのでしょうか、僕等が無闇に街を汚さないことを…」 レイズの言葉に、相づちを打つ。 「そうかもしれないな。もし、この街の担当が別の…例えばゲイン、アイツだったなら、結果は違っていたかもしれない」 ゲインは確か南の街を制圧しに行った筈。もし彼が同じように降伏を申し立てられても、果たして応じたかどうか。 「…あの人、嫌いです」 レイズの眉がひそまるのが見えた。彼はゲインを嫌う。理由は聞こうとは思わないけれど、それは断固とした意志だ。 「まぁ、そういってやるな。腕は良いんだし…軍人としては見習うべき人の筈だぞ?」 「僕が見習っているのは隊長だけです! いくら軍人として良いとしても、っ……!」 彼は二の句を告げず、小さく唇を噛み締めて視線を逸らした。 やはり、彼の口からその所以を聞くことは出来ない。それは仕方がないとすでに割り切ってはいるものの、少し残念に思う。 今、私を誰より理解してくれている彼のことだからこそ、私も知りたかった。 「…正義って、何なのでしょうね……」 呟いた言葉は、おそらく自分に向けられたモノではない。その言葉に込められた想いは、とても重く苦しいモノだった。 「でも! 結果として此処に住む方々を救えたことには満足しています。無駄に多くの血が流れずに済み、実は僕も、お酒が飲みたい気分なんです」 気を取り直すように発せられた声に、少し安心してしまう。やはり部下の気落ちは苦しかった。 「だったら飲め…て、話が戻ったな」 「あはは、僕が戻しちゃいましたね。でも、今日はお酒より月です」 レイズが見上げ、自分もまた、強く輝く巨大な衛星を見上げた。 「…明日は街の様子でも見に行くか」 「あ、良いですね。僕もお供致します」 「そうか、じゃあ一緒に」 「ええ」 月は、輝き続けていた。
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